私たちの政治、経済、社会、文化は、3・11を体験し、今日様々な矛盾と問題を抱え、その限界を克服しようとしています。オーストリア生まれの精神科学者ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner,1861~1925)は、20世紀前半、すでにこれらの諸問題を予見し、目に見える感覚的なものの背後に、目に見えない精神的なものを認識することによって、これらの諸問題に解決の道を開きました。それは誰もが、歩むことのできる認識の道としての(アントロポゾフィー)であり、人間のあらゆる活動分野に拡がっています。

 アントロポゾフィー(Anthroposophie)とはアントロポス(人間)とソフィア(神的叡智)からなる(人間の中の神的叡智)であり、広くは「普遍的人間的であること」を意味するものです。ルドルフ・シュタイナーの1924年の定義によれば、「人間における精神的なものを、宇宙における精神的なものに導こうとする一つの認識の道である」とされています。

 ここでの「精神」とは、滅びゆく「肉体」や、うつろいやすい「魂」とは別の、人間のなかの不滅の本質を指しており、「認識」とは、盲目的な信仰や、ドグマではなく、人間の自己認識に基づくものであり、「道」とは、単なる知識や情報の取得ではなく、体験に基づいた内面の生成を必要とすることを意味しています。