Ⅳ 精神科学自由大学の諸部門/数学・天文学部門

出典:Die Freie Hochschule für Geisteswissenschaft Goetheanum, Zur Orientierung und Einführung, 2008 Dornach, S.61-66

訳:石川恒夫

数学・天文学部門
Mathematisch-Astronomische Sektion

オリヴァー・コンラート
Oliver Conradt

科学的直観とイマジネーション

数学・天文学部門という、二つの専門領域は、人間に対して対極的な、かつ補足しあう関 係にあります。数学は、人間本性の内部に根差すものです。私の思考する意志の中に、ま た思考する意志を通して、アルゲブラ(代数)の諸関係と幾何学的な表象像は、同じ前提 から出発する全ての人が、内的に、私自身もそうであるように、同じ結果に至るように論 理的な合法則性に従って導き出されるのです。天文学はそれに対して、天上の感覚的な知 覚から始まります。その考察対象は地球を含めた宇宙全体です。知覚において、人間は身 体の感覚器官にゆだねられ、それによって彼の存在の外側にあります。 部門の両領域において、つまり直観を生み出すことが問われてきます。それは数学的な 概念によっては「内部」に、他方では人間本性の「外部」での知覚によって形成されます。 ですから、私たちの部門は「数学的・天文学的直観のための部門」と呼ぶこともできます。
エソテリック(秘教的)に考察するならば、数学と天文学は互いに相反する、より高次な 認識の段階の「支流」として生ずることを意味します。例えば天空の現象においては、感 覚知覚となったイマジネーションが、人間に歩み寄ってきます。数学的作業の厳密なファ ンタジーにおいては、イマジネーションは思考の側からとらえられます。
精神科学自由大学において、数学・天文学部門の協働者はそれゆえ、数学的・天文学的研 究をより高次な認識の段階からさらに発展させるという課題を育成しています。この課題 こそが理想となるでしょう。

部門の設立と発展

ルドルフ・シュタイナーが精神科学自由大学を1923/24年に設立したとき、彼は部門代表 としてエリザベート・フレーデ博士(Dr.Elisabeth Vreede)を任命しました。すでに1922年の4月にシュタイナーはデン・ハーグにおけるアントロポゾフィーの学問コースについての 報告の中で、彼女を「アントロポゾフィーを数学的自然科学の領域へ導く」「この上なく 活動的な」人物と評しています。
ルドルフ・シュタイナーは1912年に著者として名を出すことなく、「カレンダー1912/13」、サブタイトルとして「自我の誕生から1879年に」を出版しました。これには、序文「何が意図されているか」に続いて、1912年4月1日から翌年1913年の3月31日までの、週ごとのカレンダーが掲載されています。1912年の復活祭は4月7日であり、1913年では3月23日でした。イメ・フォン・エックハルトシュタインの手による、太陽が黄道十二宮を巡っ ていく季節の絵がそれぞれの週のページを補っています。それに続いて第二部には序文と52週の週の言葉(箴言)をもった『魂の暦』があり、再び復活祭から始まります。 ルドルフ・シュタイナーのこのカレンダーとの結びつきにおいて、そしてまたアントロ ポゾフィー農業の欲求を顧慮して、エリザベート・フレーデは協働者ヨアヒム・シュルツ とともに、1928年から年刊のカレンダーを発行し始めました。最初の年は、1929年復活祭から1930年復活祭までについてであり、今日まで、数学・天文学部門は80年以上、この 「星のカレンダー」を発刊しています。この編纂はフレーデからヘルマン・フォン・バラ ヴァレ、ルイス・ロッヒャー-エルンスト、ヨアヒム・シュルツ、スソ・ヴェター、トーマ ス・シュミット、ヴォルフガング・ヘルトに受け継がれています。
1935年復活祭の総会における、エリザベート・フレーデのゲーテアヌム、普遍アントロ ポゾフィー協会理事からの退任、同時に数学・天文学部門代表からの引退後、ヘルマン・ フォン・バラヴァレ「数学・天文学部門の要件の知覚」に引き継がれ、1937年にバラヴァ レがアメリカへ亡命するにあたり、彼の不在中ルイス・ロッヒャー-エルンストに委託さ れました。ルイス・ロッヒャー-エルンストは、1962年復活祭に普遍アントロポゾフィー 協会理事に任命されるまで、非公式に部門代表にとどまりました。ルイス・ロッヒャー- エルンストは理事としての本来の仕事が秋に始まる前の1962年8月に逝去し、暫定的にマ リオ・ホヴァルト-ハラー、ゲオルグ・ウンガー、スソ・ヴェターによって部門が担われま した。1963年クリスマスの臨時総会に、ゲオルグ・ウンガーが新しく部門代表となり、1990年に数学者ゲオルク・グレックラーに委ねるまで、その任にあたりました。2005年か らオリヴァー・コンラートが部門代表についています。

テーマと研究課題

星座のカレンダーのほかに、以下のような研究テーマが部門で取上げられています:現象 学的な天文学、植物と宇宙との関係における理論的実験的研究、宇宙論的な人間学、数の 精神的基礎、空間と反空間、線型幾何学、射影幾何学による数学的物理学の発展と改革、 反転技術、数学や天文学の授業(方法)などなど、該当する出版物が以下に並びます。 今後の関係者の研究指向は、二つの課題領域に分けられるでしょう。即ち「精神科学的 宇宙論」と「自然科学と技術における空間と反空間」です。
「精神科学的宇宙論」は、現象学的な天文学の擁護育成、人間の宇宙との関係が表出さ れているところの宇宙像の意識の歴史を包括するものです。また地上(世俗)的・宇宙的関 係の認識と、過去、現在、未来における宇宙の発展のための精神科学的認識を包括します。 この領域における研究は、これに関するルドルフ・シュタイナーの示唆の探求につながり、 また例えばエリザベート・フレーデ、ヨアヒム・シュルツ、ヘルマン・フォン・バラヴァ レ、ローレンス・エドワード、トーマス・シュミット、リスベト・ビスターボッシュの仕 事に接続していきます。 「自然科学と技術における空間と反空間」の課題領域は、点、線、面の三重のコンセプ ト、いわゆる「自我の数」と自然科学と技術のための新しい数学的直観の意味を包括しま す。この領域における研究は、ルドルフ・シュタイナーは勿論、ジョージ・アダムス、ル イス・ロッヒャー-エルンスト、パウル・シャッツ、ペーター・ゲシュヴィント、ニック・ トーマス、レナトゥス・ツィーグラーにつながっていきます。 この両研究領域の仕事は上述した数学・天文学部門の理想の意味において、普遍的アン トロポゾフィーの継続的な深化から生み出されるものです。

実践

数学・天文学部門は、一般向け、専門家のために、規則的に会議や講座を開いています。 ドイツの自由ヴァルドルフ学校連盟、ゲーテアヌムの普遍部門、教育部門との協働におい て、研究者、学生、教師のために天文学、数学に関する研究講座が提供されています。反 転技術の領域においては、スイス、バーゼルのパウル・シャッツ財団との密接な協働があります。ペーター・ゲシュヴィントによって導かれた数学・物理学研究所(ドルナッハ)と 部門とは定期的な意見交換を行っています。 自ら選んだ数学、天文学のテーマをアントロポゾフィーの精神科学的観点から深めてい きたいと考える学生、研究者のために、ドルナッハのゲーテアヌムに滞在する可能性があります。

出典:
Die Freie Hochschule für Geisteswissenschaft Goetheanum, Zur Orientierung und Einführung, 2008 Dornach, S.61-66
翻訳:石川 恒夫