Ⅳ 精神科学自由大学の諸部門/青年部門

出典:Die Freie Hochschule für Geisteswissenschaft Goetheanum, Zur Orientierung und Einführung, 2008 Dornach, S.96-102

訳:石川恒夫

青年部門
Jugendsektion

エリザベス・ヴィルシンク
Elizabeth Wirsching

ルドルフ・シュタイナーの切実なる願いとは、若人をアントロポゾフィー協会へ導くこ とでした。世代を超えて互いに理解しあえるような、若人との意味ある出会いは、時代に ふさわしい仕事をするのみならず、未来の衝動から霊感を得ることを可能にするものです。 ルドルフ・シュタイナーがこの観点において、いかに心をこめて若者に語りかけたか、『教 育的青年講座』からの以下の一文が示しています。
「私はこのように考えています。すなわち私がこれから数日の間に皆さんに語るであろ うことの多くが、皆さんにとって多かれ少なかれ強烈に、内なる魂の体験の一種の解釈と なるにちがいないということです。そして、皆さんがそれによって真の魂の明解さ、―単 なる概念的なものとの対比において魂的なものの明解さ―に到ることが期待されているの です。」
会員通信において、ルドルフ・シュタイナーは記しています。「若者たちは一つのトー ン(口調)のなかで語っていますが、その響きの色合いは、人類の発展において新しいも のです。人は、魂の眼差しが以前の時代から受け継がれ、現代において増殖されうるもの の継続に向けられていないことを感じています。これは時代が発展するのではなく、永遠 が開示する領域からの、生活への新たなる流入です。」
青年部門は1924年の復活祭に、「青年の精神の探求のための部門」としてアントロポゾ フィー協会の総会のさいに設立されました。教師であり古文献学者であるマリア・レッシェル(後のマリア・レッシェル―レールス)がルドルフ・シュタイナーによって指名された 最初の部門代表でした。
精神科学自由大学の枠組みにおいて、青年部門は一つの専門的な部門としてではなく、 むしろ「普遍的な」部門以上に、青年の問いに対して、専門の部門がもたらす人生や研究 についての様々な問いをアントロポゾフィーの基盤に基づいてさらに展開することができ る固有の分野として理解されるべきでしょう。「(青年部門)は『プログラム』を公表す ることはないでしょう。この部門は『若者の本質』についての解明を与えることはないで しょう。この部門は、その設立者自身が今日の若人の欠点に対して体験することができる ものに献身することを試みるでしょう。これは人生において日々新たに展開することので きる『若者の叡智』を与えるでしょう。」
マリア・レッシェルとルドルフ・シュタイナーが『私の中の第二の人間への求め』とし て記述したことを、人は今日『固有のアイデンティティーへの求め』と呼ぶことができま す。それは次の基本感情に基づくものです。「私は、私自身よりも大きい何かを私の中に 担っている。私自身よりも大きいこのものを、私は発展させたい。」アイデンティティー とイニシアチブとの関係は、ここで明白でしょう。そして固有のイニシアチブの力が、固 有の自我を彫塑するためにいかに大切かという示唆が与えられるでしょう。問いはつまり こうです:自分自身を動かすために、何をすることができるでしょうか。それぞれの行為 は、固有の自己が豊かになることを意味するべきであり、逆に言えば、固有の発展におけ るそれぞれの一歩は、世界の役に立つのです。それぞれ成長する世代が文化全体の存在を 反映するように、外的責務と内的成熟の交差は、それぞれの年齢にとって意味あることな のです。 同じことを、青年部門の協働者であるユリアナ・ヘップは記しています。「私たちは皆、 世界の運命が、私たちの固有の運命と分かちがたく結ばれていることを感じています。グ ローバリゼーションのプロセスの造形は、私たちに固有に生れるアイデンティティーその ものです。」 若き教師ハイコ・シャーフは彼の論稿『深淵を耐える勇気』の中で記しています。「新 しい岸辺への思索的な掘り起こしこそ、意識の仕事である。私たちは皆、今日多くの問い がもたらされるが、私たちの今までの経験からすぐさま答えを導き出せないことを知って いる。それにも関わらず試みる人は、彼がさらに歩いていけるような
新しい道を見出すまで、古い思考が導く深淵を充分に耐えるまでの充分な勇気をたいてい 持っていない。」 この指示のもとに人生は新しい現実を形成します。この上述したレアリティー(現実) の発見は、若人をアントロポゾフィーとの出会いに導きます。青年部門は、この出会いに 一つの場を与えるために、そしてそれを真摯に受けとめるために、そしてそれによってさ らなる発見が可能になるためにそこにあります。その発見は人生にとっての支えとなりうるものです。

仕事の方法:アントロポゾフィーによる道の求め

青年部門のテーマは、今日の人間と時代のテーマを反映しています。固有の道、そして内 的発展を可能にする諸空間を求める闘いは、若者の基本衝動でしょう。仕事の方法と重点 は、時代と共に変わりますが、基本的なポイントは保持されるものです。ここでは、精神 的に開かれた若人の自然な発展に対応する三つの時代領域を区別してみましょう。
模索(14-19歳)世界と自己自身についての存在の理解への問いが目覚めるこの年齢段階においては、内なる理想主義と人生の実践との間の真の結びつきをつくりだせることのできる人格者をとおして、世界への前向きな模索を得ることがとりわけ大切です。ここではアントロポゾ フィーが、そのようなものとしての中心にあるのではなく、自分自身を世界の発展と結び つける生活と誘発が中心にあります。この領域のための催しは、アントロポゾフィーと関 わる人間によって準備され実現されます。事例として私は隔年にゲーテアヌムで開催され る「コネクト(結びつき)・会議」を挙げることができるでしょう。ポイントは、意味豊 かな事柄を人生と世界に貢献するために、どのような精神的、社会的、実践的能力を今日 の人間は必要としているのか、ということです。個々の職業領域に関する多種多様な作業 グループが、最初のきっかけを与えます。
他の事例として、「IDEM」プロジェクトがあります。これは「イニシアチブによるアイ デンティティー」-社会的な関心をもった若人の世界的なネットワークです。アイデンティ ティーの発展との関係において、現代の多くの若人は、自由意志からのプロジェクトに具 体的に助け手として協働したいと望んでいます。社会的、文化的な体験をとおして、アイ デンティティーは育成されるのであり、外的諸体験が内的能力に変容されるのです。これ はまた同時に始まりであり、大人による支えが大きな価値をもっています。趣旨:「私という存在は世界のために重要であり、何か貢献しなければならない!」
発展(学業の終りに向かう、19-25歳)この段階においては、最初の模索への必要は過ぎ去り、若人は関心を寄せることのでき る個々の専門的なテーマを捜し求めています。しばしばそのテーマは直接アントロポゾ フィーと取り組むものでもあります。問われるのは修業の道の視点であり、その理解と深 化です。意見交換への望みは重要であり、この領域での体験をもった人々との出会いも大 切です。アントロポゾフィーは開かれた世界規模の運動であり、世界において意味ある場 を占めているという感情は、この年齢段階において大きな意味をもっています。アントロ ポゾフィーを理解することに努め、その中で自分自身を自由と感じたいと願います。 以下の事例が挙げられます。毎夏、青年部門はアントロポゾフィーの諸視点のための会 議を企画しています。加えて様々なテーマをもった週末セミナーがあり、またルドルフ・ シュタイナーの様々なテーマ、講演や文献の勉強会があります。これらの会議では、意志 の問題や固有の内的導きへの問い、あるいはシュタイナーによって与えられた行への問い に対する講演がしばしばもたれています。趣旨:「魂や世界を吹きわたる新鮮な風のように、アントロポゾフィーを感ずるべきで ある。」
深化(25-35歳、そしてそれ以降)今や本当にアントロポゾフィーと向き合い学ぶ欲求が存在しています。その問いの中心 にあるのは「アントロポゾフィーとは何か?」ではなく、「私は日々の体験をいかに深化 することができるか、私はいかに精神の学徒となるか?」です。こうしてアントロポゾ フィーと結ばれていると感じることで、アントロポゾフィーの運動と協会の発展は、大な り小なり関心あるテーマであるのみならず、それに対して責任の感情を抱くにいたるので す。
この若人のために、青年部門は一年に二つの出会いの場をゲーテアヌムで開催していま す。冬に「ゲーテアヌム2月会議」がありますが、これは学問と精神性、自我の意味、境 界の体験、瞑想的思考といったようなテーマによる、若人のための会議です。全ての部門 代表とゲーテアヌムの理事が参加し、講演を行い、若人の作業部会をリードします。夜に は学生主体により、理事や大学指導部とともにアントロポゾフィーや精神科学自由大学に ついての公開討論が開かれます。 また5月には青年部門の枠内において、自由大学の第一クラスの若い会員のための週末 会議があります。個々の瞑想の実践に対する問い、マントラの学びやミヒャエル・シュー レへの問いが立てられます。毎回特定のクラッセン・シュトゥンデの時間がテーマの中心 にあります。実り豊かな学びの方法が展開されます。即ち私たちはクラッセン・シュトゥ ンデ自身の内容をまずはとらえ、その後クラッセン・シュトゥンデから生じるいくつかの 準備されたテーマに向かいます。私たちはまた、深化のプロセスで作業するように、互い に記述することも試みます。つまり私たちが容易に理解したこと、理解に困難を覚えたと ころ、私たちが発見したことなどです。趣旨:「アントロポゾフィーから私は世界の必要に奉仕することができる。」

展望

青年部門は始められた仕事を、関心をもった人々との、常に成長する、世界的なネット ワークとの協働において、更に発展させたいのです。そのために問いが生じます:部門は 現代の文化生活において、その具体的な提案をいかにより視覚化できるのでしょうか。そ の点についての第一の答えは、2008年秋にスウェーデン・イエルナで開始した、18歳から25歳までの若人のための新しいオリエンテーション年です。それは「YIP(Youth Initiative Programme)青年イニシアチブ・プログラム」です。そのライトモチーフは「明日の世界を 今日のイマジネーションからつくりだす」です。 この国際的な青年のイニシアチブ・プログラムは、アントロポゾフィーによって霊感を 与えられた、社会形成における事業家のための育成です。それは、私たちの社会の新しい 形成に創造的に関与する道を探し求める若人に向けられています。このプログラムの目標 は、若人の能力と知識を羽ばたかせることにあり、それによって彼らが社会的な問題を認 識し、彼らのイニシアチブを社会形成に導入し、それを組織化し、それを管理する事業家 精神の諸原理に応用することができるようにすることです。 人生を肯定するアントロポゾフィーへの問いは、様々な養成機関においてますます増え ており、変化と凝縮化を求める声を耳にします。アントロポゾフィー協会にとってこの発 展は、若人、そして彼らの意図との結びつきの視点にとって大変重要です。1924年にルド ルフ・シュタイナーはこの関係を以下のように表現しました。「精神の体験を真摯に探し 求めるところで、若人は年齢を重ねた人々と集まる領域を再び見出す。もし若人に対して 『若く』なければならない、と言うとすれば、それは内実のないフレーズである。否、若 人のもとでは年を重ねた人間として、正しいあり方で『年取って』いることを理解しなけ ればならない。」

出典:
Die Freie Hochschule für Geisteswissenschaft Goetheanum, Zur Orientierung und Einführung, 2008 Dornach, S. 96-102
参考
URL [e-news], www.youthsection.org

翻訳:石川 恒夫